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東京高等裁判所 平成2年(ラ)660号 決定

抗告人 三銀モーゲージサービス株式会社

右代表者代表取締役 門脇康男

右代理人弁護士 星徳行

堀輝彰

主文

本件執行抗告を棄却する。

執行抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は、別紙「抗告状」記載のとおりである。

抗告人は、第一に、本件不動産競売申立事件の不動産の所有者は更生会社であるのに、原決定がこれを管財人であるとして、本件競売申立てを却下したのは違法である旨、第二に、抗告人が有する本件抵当権については抵当証券が発行されているところ、抵当証券法三〇条一項は、抵当証券の所持人は債務者が元本の支払をしないときは弁済期から三月内に抵当権の目的たる土地、建物又は地上権に付き競売の申立てをなすことを要する旨規定しているから、本件競売申立てについては、会社更生法六七条一項は適用されないと解すべきであるのに、原決定が同条項の適用があるとして、本件競売申立てを却下したのは違法である旨主張する。

二  当裁判所の判断

更生手続開始決定があつた場合には、会社財産を管理処分する権利は管財人に専属し(会社更生法五三条本文)、訴訟手続等においては管財人が当事者適格を有することとなる(同法九六条一項)。しかし、会社更生法六七条一項は、更生手続開始の決定があつたときは、破産、和議開始等の申立て並びに更生債権若しくは更生担保権に基づく会社財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、競売等は、することができないと規定している。右規定は、更生裁判所の統一的な監督の下に更生手続を円滑に実施するため、更生手続開始決定後においては、会社財産に対するその他の権利実行手続は原則として一切許さないこととしたものであるから、抵当証券法三〇条一項の規定に基づく競売の申立ても、することができないと解すべきである(抵当証券所持人の裏書人に対する償還請求権は、抵当証券法三二条により保全されうると解される。)。したがつて、抗告人の主張は、採用しない。

三  以上のとおりであつて、原決定は相当であり、本件執行抗告は理由がないから、これを棄却する

(裁判長裁判官 藤井正雄 裁判官 伊東すみ子 大藤敏)

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